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筑波大学 医学医療系 小児科講師/今川 和生 先生 監修コラム②

アラジール症候群とともに暮らす

~日常生活で気をつけたいことと支援制度~


アラジール症候群は、生まれつき肝臓や心臓、血管、骨、目など複数の臓器に影響を及ぼす希少な遺伝性疾患です。
症状や重症度は患者さん一人ひとり異なり、「同じ病気でも症状が全く違う」と言われるほど個人差があります。


そのため、「どんな生活を送ればよいの?」「学校や仕事は続けられる?」「利用できる支援制度はある?」
といった不安を抱える患者さんやご家族も少なくありません。


しかし、適切な医療を受けながら、周囲の理解や支援制度を上手に活用することで、
自分らしい生活を送っている患者さんも多くいらっしゃいます。


今回は、アラジール症候群とともに暮らすうえで知っておきたい日常生活のポイントや、
利用できる支援制度についてご紹介します。


日常生活で最も大切なのは「無理をしないこと」

アラジール症候群は、肝臓だけでなく心臓や血管、腎臓などにも症状が現れることがあります。
そのため、患者さんごとに体調や疲れやすさなど日常生活で感じる大変さは大きく異なります。

「昨日は元気だったのに今日は疲れやすい」「午前中は調子が良くても午後になるとだるくなる」といったことも珍しくありません。

まず大切なのは、自分の体調をよく知ることです。

体調が良い日もあれば、休息が必要な日もあります。
無理を続けるよりも、適度に休みながら生活リズムを整えることが、長く元気に過ごすためのポイントになります。

また、十分な睡眠や規則正しい生活も、体調管理には欠かせません。


「かゆみ」は我慢しない

アラジール症候群では、胆汁うっ滞によって強いかゆみが現れることがあります。

かゆみは見た目では分かりにくい症状ですが、
患者さんにとっては日常生活に大きな影響を与えます。


  • 夜眠れない
  • 集中力が続かない
  • 無意識に皮膚をかき壊してしまう
  • イライラしてしまう

など、生活の質(QOL)を大きく低下させる原因となります。


アラジール症候群のかゆみは皮膚炎などでよく使われるくすりが効きません。
近年では、アラジール症候群におけるかゆみを改善する新しい治療薬も使用できるようになってきました。

「仕方がない」「我慢するしかない」と思わず、気になる症状があれば主治医へ相談することが大切です。


また、爪を短く切る、肌を乾燥させない、室温を適切に保つなど、日常生活でできる工夫も症状の軽減につながります。


栄養管理も大切な治療の一つ

アラジール症候群では、胆汁の流れが悪くなることで脂肪や脂溶性ビタミン(A・D・E・K)が吸収されにくくなることがあります。


そのため、

  • 体重が増えにくい
  • 身長の伸びがゆっくり
  • 骨が弱くなる
  • 出血が止まりにくい
  • 視力の低下
  • ビタミン不足

などがみられることがあります。


特に成長期のお子さんでは、栄養状態が将来の発育にも影響するため、定期的に体重や身長を確認しながら、
必要に応じて栄養補助食品やビタミン剤を使用することもあります。


食事内容については自己判断で制限するのではなく、医師や管理栄養士と相談しながら進めることが大切です。


学校生活で大切なこと

子どもの患者さんでは、学校生活について不安を感じる保護者も多くいらっしゃいます。

アラジール症候群は外見から分かりにくい病気であるため、
「元気そうに見えるのに体育を休むの?」「疲れやすいのはなぜ?」と周囲に理解されにくいことがあります。


学校には、

  • 病気について
  • 疲れやすさ
  • 通院があること
  • 体育や行事で配慮が必要なこと

などを事前に共有しておくと安心です。


必要に応じて、主治医に学校生活での配慮事項を書いた文書を作成してもらうこともできます。

学校と家庭、医療機関が連携することで、お子さんが安心して学校生活を送れる環境づくりにつながります。


成人後の生活と就労

近年では医療の進歩により、多くの患者さんが成人し、進学や就職、結婚、子育てなど、それぞれの人生を歩まれています。


仕事については、体力を必要とする職種では疲れやすさが課題になることもありますが、
体調に合わせた働き方を選択することで長く働いている方も少なくありません。


また、定期的な通院が必要になるため、職場へ病気について適切に伝え、通院への理解を得ることも大切です。
成人期は病状をご自身でよく理解しておき、臓器別の専門医診察を受けていきます。小児科医は将来の内科診療移行に向けて一緒に準備します。


病気があるからといって、夢や目標を諦める必要はありません。

自分の体調と向き合いながら、自分らしい働き方を見つけていくことが大切です。


一人で抱え込まないために

希少疾患では、「同じ病気の人に出会えない」「相談できる相手がいない」
と感じることがあります。


そんなときは患者会や支援団体を活用することもおすすめです。

同じ経験を持つ患者さんやご家族と交流することで、

  • 病気との向き合い方
  • 学校生活の工夫
  • 進学や就職
  • 治療や生活の情報

など、医療機関では得られない実体験を知ることができます。


「自分だけではない」と感じられることは、大きな安心につながります。


利用できる支援制度

アラジール症候群は指定難病の対象となっており、一定の基準を満たす場合には、医療費助成制度を利用できる可能性があります。

また、症状や生活状況によっては、次のような制度が利用できる場合があります。


指定難病医療費助成制度

指定難病として認定された患者さんは、所得や重症度などの条件を満たすことで医療費の自己負担が軽減されます。


小児慢性特定疾病医療費助成制度

18歳未満(継続の場合は20歳未満)の患者さんでは、小児慢性特定疾病の制度を利用できる場合があります。


障害福祉制度

病状によっては身体障害者手帳や障害年金、障害福祉サービスなどが利用できることがあります。


利用できる制度は症状や自治体によって異なるため、主治医や病院の医療ソーシャルワーカー、自治体の窓口へ相談するとよいでしょう。


おわりに

アラジール症候群は、一人ひとり症状も生活環境も異なる病気です。

そのため、「正解は一つではない」ということを知っておくことが大切です。


医療の進歩により、新しい治療薬の登場や診断技術の向上が進み、患者さんを取り巻く環境は少しずつ変わってきています。
また、医療だけでなく、学校や職場、行政、患者会など、多くの人や制度が患者さんの生活を支えています。


困ったときには、一人で悩まず、主治医や医療スタッフ、患者会などに相談してみてください。
周囲の理解や支援を得ながら、自分らしい生活を築いていくことが、アラジール症候群とともに歩むうえで何より大切です。



監修:筑波大学医学医療系小児科講師 今川和生 先生